舞城王太郎の彼氏ヅラしながら『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』観てる Part 2(第7話~第10話まで)

ID: INVADEDが10話まで終わりました。前半も面白かったですが、後半入ってからサスペンス的なスピード上がってまた一段階面白くなっています。

一方で話がどんどん複雑になってきて文脈ゲームやってる場合じゃなくなってきています。毎回2周以上ずつ観てるけどついていくのだいぶギリギリなので、この辺で個人的なメモ兼ねて前回の続きです。

※今回アニメの内容整理するだけでいっぱいいっぱいだったので言うほど舞城の話ないです。あと清書するキャパなかったので箇条書きです。ご了承ください。

FILE: 07 THUNDERBOLTED

・勝山伝心(対マン)の自宅から、鳴瓢が対マンを射殺した際の殺意を採取し、鳴瓢のイドに潜る準備が整う。

・対マンは鳴瓢の奥さんの娘の仇、かつ今までの犯人と同じくジョンウォーカーの影響を受けている連続殺人犯。

→『ID: INVADED』の作中時間は2019年。鳴瓢が射殺したのは3年前の2016年。(ぶっちゃけ時系列はいまだに細かく把握できてないのでざっくりだけ)

・前回探偵に指名されたのを受けて本堂町が鳴瓢のイドに潜る。雷の世界。

・聖井戸がかわいい。

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本物の変態が作ったキャラデザでしょ

・そして聖井戸がイドの中のイドに潜る。

・イド内ミヅハノメに表示されているイドの持ち主の名前は「飛鳥井木記」。

→この回の最初に写真が出てる。カエルちゃんと同じ顔

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→次の第8話アバンでは飛鳥井木記のプロフィール資料が読み上げられる。

・「イドの中のイド」がどういうものなのかはこの時点では不明。なんで飛鳥井木記がカエルちゃんと同じ顔なのかも不明。

・いつも死んでいるカエルちゃんは、第1話で「ミヅハノメのデフォルト機能で用意されている」存在だという説明がされている。

→個人的な解釈ですが、本来は「ある個人の無意識を表現している」がゆえに自己完結しているずのイドの世界に名探偵としてダイブするためには、「その世界に存在するための役割」が必要になるんじゃなかろうか。だからミヅハノメがイド世界にカエルちゃんの死体という異物を世界に挿入することによって、名探偵はイドの世界で「カエルちゃんの死の謎を解くという役割」を得ることができる。

→その意味で、第6話で酒井戸が「俺は君に死んでほしくないだけなんだ…」と呟きながら泣くのは、世界のルールを嘆くようなシビアさを持っている。

ミステリー小説でも大抵の場合「探偵の役割」は、事件を解決することであって予防することではない。

・百貴さんの自宅からジョンウォーカー変身セットが発見されて百貴さんが逮捕されて続く。

FILE: 08 DESERTIFIED

・アバンで飛鳥井木記のプロフィール資料が読み上げられる。

→鳴瓢が対マンを射殺した際に助け出される(2016年)。

→入院中の2017年3月21日に看護師が意識を失う集団昏睡事件が起き、行方不明になる(第10話で描かれる)。

・イドの中のイドに行ったっきりの本堂町を助けるために鳴瓢と富久田(穴あき)が同時にイドに潜る。

→本堂町は鳴瓢のイドを経由してイド内イド(=飛鳥井木記のイド)に入ったが、鳴瓢と富久田は別のイドを経由してイド内イドに入ろうと試みる。2ヶ所の違う入り口から同じ部屋に入るようなもの。

→2人で潜るのは1人がイド内イドにダイブしてからイド内ミヅハノメの排出ボタンを押すもう1人が必要になるため。

・イド内イドに行くためにまず第1段階として潜る先は「百貴さんの自宅から検出された殺意のイド」

→「百貴さんのイド」と呼ばれてるけど実際百貴さんが真犯人とはあまり思えないので、誰かが罠のために残していったイドと考える方が妥当だと思う。

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・富久田がミステリー論を話す。

あのさ、普通1冊のミステリーに名探偵2人は両立しないわけ。だって答えは1つなのに名探偵2人もいたら、どっちかが間違える役になるでしょ。

いかにも1人が名推理を披露したように見せかけて、事件が終わった後にもう1人がさらなる真相を言い当てて全部ひっくり返しちゃうような。名探偵って最終的に見逃しや間違いがあったら失格だからね。実は、先に推理した方は間違えたふりしてたってのはぎりぎりありかもしれないけど。

つまりさ、俺たちのどちらかが名探偵として失格になった時も、その世界の中にいられるのか?あるいはその世界に不具合は出ないのかってこと。

この名探偵が複数いるミステリー小説という議論は、舞城王太郎のミステリー論の根幹でもあります。20世紀末、このアイデア舞城王太郎とほぼ同時に思いつき、僅差で先にデビューした作家がいました。

それが清涼院流水。そしてそのデビュー作が「探偵がめちゃくちゃ出てくる小説」、『コズミック』。

この問題作を日本で一番真面目に読んだのが舞城王太郎であった。この後舞城は10年以上流水大説に取り組むことになる。

『ID: INVADED』は原作クレジットが「The Detectives United」となっていますが、おそらくこれは清涼院流水の創造した探偵の結社「Japan Detectives Club」が元ネタだと思います。

このあたりを説明していると無限に長くなるので適当に端折ります。10年くらい前ならおれが必死にこんな記事書かなくても無限にイド論壇やってたはずなのにみんなどこに行っちまったんだ……

・酒井戸と穴井戸が入ったイドは砂漠の世界、酒井戸と穴井戸の珍道中が今回のメイン。

・ラストでイドの中のミヅハノメを発見し、酒井戸がダイブする。ここまでの過程はかなりご都合主義にも見えるし、作中でも蔵の側から疑念が持たれる。しかし、酒井戸はこう考えている。

名探偵だからわかる。俺たちは何もかもについてすべて正しくて、これは、ここでこうしてこうなるように揃っていたのだ。

前回も書きましたが、これは「名探偵」が、機能や記号に還元されている、と読むことができます。酒井戸が自らの選択に絶対の自信を持っているのは、ミステリー小説における探偵がそのルール上誤りを犯すことは絶対にないからです。

一方で現実では百貴さんが「イドから出せ!全部罠だ!」と叫んで終わる。

FILE: 09 INSIDE-OUTED

・イド内イド世界の中身は過去の世界。鳴瓢曰く「完全なでっちあげの世界」。通常のダイブと違い鳴瓢はここまでの記憶を持っている。

→時系列はスマホニュースの日付で2016年10月29日。第7話で鳴瓢が対マンを射殺したのは(2019年から見て)「3年前」と言われているので、それが起こる少し前。

・状況を理解した鳴瓢が対マン宅に行く。

→「名探偵」は事件が起こった後(被害者が殺された後)にその謎を解くことにしか能力を発揮できないが、この世界ならば事件が起こる前に防ぐことができる、みたいに解釈できる気もする。

・飛鳥井木記(カエルちゃんと同じ顔)が殺される寸前で助ける。

さて、この作品はここまでに主に二層構造で展開されてきました。

①現実(「蔵」がある世界)

②イド(無意識の世界)

の2つです。そして今回はここに

③イドの中のイド

が追加されました。そして同時に第4のファクターまで投入されます。

それが④夢

・この回での「夢」は、今までの無意識の世界であるイドとはっきり違う性格を持たされている。それが、映像ではどこから現実を離れて夢に入ったのがわからないという描き方をされていること。

→鳴瓢が木記の病室を訪ねるシーン(花火が上がっていて「顔そぎ」が入ってくる)は、鳴瓢が目覚めるまではどこからが夢だったのかは区別がつかないように描かれている。これはイドの世界がミヅハノメに座って異世界へ投入されるプロセスを必ず描写されていたのと対称的。

・飛鳥井木記の特殊能力が明かされる。「記憶・言葉・思い出・夢など心の中がイメージ化されて他人に伝わる」「殺人鬼が夢の中に入ってくる」

→ほぼ確実に飛鳥井木記の能力を使ってミヅハノメが作られている

→「連続殺人鬼だけがイドの中で名探偵になれる」のは「殺人鬼が夢の中に入ってくる」の変形と読める。

図にまとめるとこう(多分)。

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・終盤で2回目の夢のシーンが入る。浴槽で自殺しているのはカエルちゃんと顔が似てるけど鳴瓢の奥さん。
→鳴瓢の奥さんと子どもがカエルちゃんと似てるのは何かしらの意味がある気がするけどまだわからない。

・これを受けて最後にこの台詞で終了。

ねえ、どんな夢を見たのかわからないけど、私が死んだらそれが夢だっていう合図だから、そこで起きればいいよ。

この回は「今見ている世界は本当は夢なのか現実なのかわからない」という描写が入ったのが個人的に気にかかったところです。上の言葉を信じるなら、鳴瓢は今まで現実だと思っていた蔵の独房から目が覚めることができるのかもしれない。あるいはそうして目覚めた先の方が夢なのかもしれない。いずれにしても鳴瓢は不眠に苛まれているのだけれど。

あと「架空の世界で過去の後悔を払いのける」「何度も繰り返し殺される女」「不眠」あたりも舞城のモチーフに結びつけられますが、長くなるので端折ります。

FILE: 10 INSIDE-OUTEDⅡ

・飛鳥井木記が夢の中で未来の出来事を見ることもあることを話す。

→それを受けて鳴瓢が自分が今いる世界について考察する。

→つまり、今までの第1話~第9話までのストーリーが飛鳥井木記の夢の世界で経験していた予知夢だったとすれば、今の世界(イド内イドの過去の世界)の方が現実だと解釈することもできる

→そして、鳴瓢はこの解釈に誘引されている。ここでは綾子も椋も生きているし、過去をすべて取り返すことができる。

・木記の病床にミヅハノメの開発者「白駒二四男」が来ている。

→現実では百貴さんの自宅で死体になって発見されている。

・木記が自分の能力を語る。「殺人鬼をすべて排除しても自分の中に残っている記憶が自分を抹殺していき、いずれは世界のあり方までをも捻じ曲げる」

・木記が病院から姿を消す(第8話アバンで説明された2017年3月21日の飛鳥井木記が行方不明になる事件)

・鳴瓢が元々の目的だった本堂町と鉢合わせる。本堂町はここがイドの中のイドだと主張するが、鳴瓢はこの世界の方が現実だという解釈を取りたがっているので聞きつけない。

・本堂町が話す日付は「2019年4月20日」。「蔵」が存在する現実の世界の日付を言っている。

→一方で鳴瓢のスマホに表示されている日付は「2018年11月18日」。イド内イドの過去の世界の日付。鳴瓢がこの世界で覚醒した日付は2016年10月29日なので、鳴瓢はこの世界でおよそ2年を過ごしている。

→この矛盾によって、イド内イド世界が崩壊する。

・鳴瓢は妻の綾子に電話をかける。綾子は困惑しながらこう尋ねる。

アキくん、今どこにいるの?

この台詞には、「疲れ果て、混乱している男へ向けて電話越しの女が尋ねる」というシチュエーションも含めて、引用元が存在します。

村上春樹ノルウェイの森』。

ノルウェイの森 文庫 全2巻 完結セット (講談社文庫)
 

舞城王太郎はこの台詞をデビュー作『煙か土か食い物』でも引用しています。*1

そして、鳴瓢はこの問いに答えなければならない。妻も娘も生きているこの世界にこれ以上ないほど惹かれているのに。

しかし、鳴瓢はこの世界を選ばない。あるいは脳裏にフラッシュバックする過去がそれを選ばせない。人間は記憶を失い、謎を解く機能に還元された名探偵ではない。人は、後悔と罪と悲しみで染め上がった過去を背負いながら生きていかなくてはならない。

本当の俺は現実にいるんだ。君のいない、椋もいない、現実に。

・鳴瓢は崩壊しかけの世界で本堂町に捜査メモを手渡して終わる。

→本堂町は一貫して「強い」キャラクターとして描かれていますね。鳴瓢のほうがナイーブです。助けに来たはずなのに結局助けられてるし。

・……で、ここで終われば感動的な回で終わるのにそう終わらない。砂漠の世界に戻ってみると穴井戸が「頭に穴空けてるから現実世界の記憶を持ち込める」とかいう謎論理で砂漠の世界が鳴瓢のイドだったことを突き止める。

→つまり、百貴さんの家で採取された殺意の持ち主は鳴瓢だった鳴瓢が百貴さんの家でなんらかの殺人を起こしたことになる。

・よって、第1話から予告されていた自分のイドに落ちると現実に戻れなくなるというドグマ落ちが起こる。そして雷の世界では見つからなかったはずのジョンウォーカーが…。

そういうわけで第10話終了時点での図はこうなる(多分)。

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はー疲れた、他にも犯人が誰かの予想とか書きたかったけどまとめるだけで精一杯だったので切り上げます。

1点だけ。物語は謎解きの整合性や犯人の意外性よりも、最終的に鳴瓢の治癒や慰安に収束していくのではないか、という気がします。あるいはそう収束してほしいみたいな願望がある。

13話構成のようなので残りは3話ですが、このアニメの話の密度ならもう一転、二転くらいは話に広がりありそうで、まだまだ楽しみにしています。

あと聖井戸主人公でスピンオフ観たい。

※続き

livedoor.hatenadiary.com

*1:大元はレイモンド・カーヴァーとかだったかも気もする。でもこっちの方が有名なのは確実なので…