舞城王太郎読んでたゼロ年代の生き霊ヅラしながら『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』観てる イドPart 5(第12話)

本堂町………………………!!!!!

 

 

富 久 田……………………………………………!!!!!!!

 

みんなもう12話観たか!?

やばすぎて頭冷えなくて全然寝れなくて起きてからも何も手がつかなかったので大急ぎで書きました。

ぶっちゃけミステリー的な種明かしとしては(案の定)そんなでもなかったけど、文脈や物語的な意味を読むには非常に豊かな回です。

2020年代も令和もコロナもオリンピックも知ったこっちゃねえ。ゼロ年代に戻してやる。

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FILE: 12 CHANNELED

ヒロイックな回でした。いつにも増して声優や演出の力が大きかったと思います。

あおきえい監督は演出畑の人だと思っているんですが、個人的な経験だと小説家が直接アニメの脚本書くときは画面な地味になりがちな印象があるので、これくらい盛っている方がバランス良くなる気がします。私の好みもありますが。とはいえ舞城もここ数年ずっと漫画原作やってるのもイドの面白さに結構影響大きい気がする。

以下適当にポイントまとめ。

ミヅハノメに閉じ込められていた飛鳥井木記の超能力によって蔵にいた全員がイドの中に引き込まれる。

・記憶を消すコックピットから投入されているわけではないので、名探偵になる資格がある(連続殺人を犯している)井波七星(墓掘り)や、富久田も現実の記憶を持ったまま巻き込まれている。

・仮面がばらまかれている世界。「私のイドと、私の作ったイドと、私の知らないこの世の未知なる殺人者たちのイドが陳列されている」。

→ぶっちゃけこのあたりの仕掛けやメカニズムの整合性は個人的にあんまり興味ないし、たぶん普通のアニメだと謎っぽく見えるもののいくつかは全部終わっても説明ぶん投げられたままになると思うので適当に飛ばします。

・聖井戸があざとい(かわいい)。

・はぁ~CV:佐倉綾音のキャラにおいしい役回りがないはずないと思ってんだよな~~。たぶん名探偵にはならないんじゃないかと思ってたけどそう来るかぁ~ズルいなぁ~。

・今回のイド世界(イド内イドもだったけど)は、「失った人との再会」みたいなシーンがいくつか出てきます。井波七星も彼氏と再会したし、鳴瓢も雷の世界で妻と娘にまた会っていました。このあたりで私が思い出すのは、もはや元ネタとか言えないレベルの古典、村上春樹世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』のこのような一節です。 

「しかしあんたはその世界で、あんたがここで失いつつあるものをとりもどすことができるでしょう。あんたの失ったものや、失いつつあるものを」

「僕の失ったもの?」

「そうです」と博士は言った。「あんたが失ったものすべてをです。それはそこにあるのです。」

一方で、頭に空けた穴という「欠落」によって完全性を得ていた本堂町は、逆に富久田を失う。

井戸という新世界

話が飛びますが結論から書きます。

連続殺人鬼メイカー「ジョンウォーカー」とはいったい何なのかというと、「メイカー」の名の通り、作者です。

『イド』のミステリー的なオチは、蔵を立ち上げた局長本人が連続殺人犯を生み出し、蔵に殺人鬼の殺意を収集しミヅハノメを大型化させるというマッチポンプというものでした。まあぶっちゃけミステリーの種明かしとしては大したことないと思います。次回またなんか付け加わると思うけどそれもいいとして。

しかし、重要なのは蔵にコレクションされた殺人鬼の無意識の世界を作ったのが、局長=ジョンウォーカーだったということです。

では、世界の「作者」とはなんだろうか?

世界の外にいながら、あるいは世界そのものでありながら、世界を作った存在とは?

そう、である。

つまり局長=ジョンウォーカーの目的とは、文字通りイドという新世界の神になることだったわけです。

なぜ潜在的な殺意を呼び起こし、連続殺人事件を起こさせたのか?それは、連続殺人鬼の殺意を集め、ミヅハノメにプールし、それによって作られたイドの世界の神となり永遠に生き続けることを目指していたからです。パート3(参照)で引用しましたが、イドに潜れば肉体が滅んでも精神のみが生き続けることが説明されています。

これによって、ジョンウォーカーによる連続殺人は「新世界を創造する行為」として理解することができます。殺人の見立てルールに「7日間での天地創造」を使っていたのもこのアナロジーとして帰結します。

メタフィクショナルな神殺し

そして、神=ジョンウォーカーによって作られたイドの世界と同じように、イドの名探偵もまた神によって作られた被造物です。鳴瓢は今回のラストでこう言う。

お前の作った名探偵が、お前を本当の地獄に落としてやる。

つまり、酒井戸たちとジョンウォーカーとの対決とは、被造物による神への叛逆という意味を持ちます。 

また、これは舞城王太郎メタフィクション的ミステリー論の構造を応用したものと見ることができます。詳しくは弊ブログのパート1で書きました。

livedoor.hatenadiary.com

神が世界を作ったのならば、ミステリーを作ったのは誰か?答えは簡単。その小説の作者です。この「作者」はわれわれが普段使っている作者という言葉を文字通り表現したものです。ミステリー小説の表紙にタイトルと一緒に「作:◯◯」って載ってるやつです。シンプル。

つまり、酒井戸たちの戦いはイドというミステリーを模した世界の作者=神との戦いであるわけです。

逆に言えば、もし我々の世界にも神様がいるとすれば、この世界の外でこの世界という物語を書いている著者のような存在が神となるはずです。

探偵神 

聖書の文脈を続けます。

ジョンウォーカーが世界の外にあって世界の作者である超越神、いわば「旧約」の神であるならば、酒井戸・穴井戸・聖井戸の3人の名探偵は三位一体の神、すなわち「新約」の神です。

そして3という聖なる数字から導かれるのは現実/イドの2つの世界によって二重化された3×3=9。よって、『ID: INVADED』に召喚されているのは、清涼院流水が生み出し舞城王太郎が引き継いだ「キャラクター」、ミステリーという〈世界〉における名探偵の役割を極限まで突き詰めたメタ探偵、探偵神・九十九十九である。

九十九十九 (講談社文庫)

九十九十九 (講談社文庫)

 

私はアニメ中盤の頃「こんだけ舞城節なら九十九十九とか出すのかな?と思ったけど世界観ちゃんとしてるから出さない気がしてきた」とか書いてたけど、設問レベルから大間違いでした。

とっくにいたのだ。最初から。過去には3つの顔や3つの臍を持っていたように、3つの身体に分かれて。

九十九十九』は、舞城王太郎作品の中でも最も入り組んだ構造を持つメタフィクション作品です。ジョンウォーカーという「作者」と対峙する酒井戸たちのように、『九十九十九』の主人公・九十九十九もまた、自らの世界の神=作者と対決することになる。

それゆえ、九十九十九が空っぽの神の玉座に辿り着く第6話のサブタイトル(それは小説の内容=内部という世界の「外」に属する)には、このように記されるだろう。「Otaro Maijo」。*1

非-名探偵、穴井戸・富久田保津

もうひとつ気になったのは穴井戸・富久田保津です。ピンと来たのはこの台詞。

―本堂町

ちなみに数字が好きで嫌いなあなた、「7」って数字はどう思う?

―富久田

悪い数字じゃないけど、この数字が好きな奴は嫌いかな。Pretentious*2

―本堂町

どういう意味?

―富久田

ただの素数なのに、意味や物語がくっつきすぎてるんだよねぇ。非常に上っ面のいい数字になってしまっている。

なぜここが気になるかというと、ミステリーにおける探偵とは、犯人の残した痕跡やトリック・被害者などから意味や文脈を読み取るための役割であるはずだからです。

つまり、富久田保津は「何の意味もなさそうなものから意味や文脈を読み取る」という普通のミステリーにおける探偵とはまったく逆で、「意味があるものが嫌いでただ何の意味もない数字を好む」と言っているわけです。

これは、雷の世界や砂漠の世界で、カエルちゃんが探偵宛てに残したヒントを全部無視してゴリ押しで攻略しようとしていたことからもわかります。

おそらく、7~10話において局長(ジョンウォーカー)が罠で富久田を殺させようとしたのは、これが理由なんじゃないかと思います。前回で富久田はジョンウォーカーの夢での誘いに乗らなかったと言っていたことが判明したし、本堂町は他のシリアルキラーと富久田の穴は意味が違うと言っていました。

時間かかるので詳しい整合性までは追いませんが、いずれにしてもこの頭に穴が空いている男が他のシリアルキラー及び酒井戸や聖井戸とは違うイレギュラーな存在であり、局長はそれを警戒しているのではないかと思います。

世界という名の密室

病院に対ミヅハノメ用ヘルメット(ダサい)を取りに行っている百鬼さんがこういうことを言います。

彼女の居場所は、ミヅハノメという箱の中にしかないのかもしれない。

この「箱」には、私は「密室」のイメージを読み取ってみたい気がします。第1話も密室殺人でしたね。

世界は密室でできている。 (講談社文庫)

世界は密室でできている。 (講談社文庫)

 

ミステリーにおける「密室」とは、両義的な概念です。なぜなら、ミステリーにおける謎は、ミステリーのルールによって必ず名探偵によって解かれることが前提とされている謎だからです。密室とはその定義上、閉じていると同時に開いているわけです。

落雷の井戸です!そこで思い出して!あなた自身を!あなたが世界のためになすべきことを!

鳴瓢は思い出さなければならない。カエルちゃんが殺され続ける世界にも意志と倫理が甦ってくる。誰かの死はただの道具や記号であってはならない。人はなすすべなく殺される前に救われなければならないし、探偵は救わなければならない。

といったところであと他にも本堂町と富久田のやりとりなんかも絶叫しながら観てたんですが、いつまで経っても終わらないのでここまでにします。最終回ほんとに楽しみにしてます。

※続き

*1:これ書きながら電子版買ったら扉ページ削られてました…

*2:「気取っている」「大げさ」「自惚れ」みたいな意味とのこと