良かったウェブで読める漫画ふたつ

 

人夏『みぞれちゃん、』(推しVチューバーの中の人に出会ってしまう話)

さっき流れてきて良かったので今月の記事ノルマのためにも書くことにしました。

最初見たときはまーた説明タイトルで画像4枚貼ってツリーにするやつかよと思ったけど抜群に良かった。個人的な話ですがつい数日前、以前よく見ていたVtuberの人が引退した(若菜レイという人です)のでなんかそういうリンクがあったんだね。Vも2018年頃は毎日何時間も観てたんだけど今は完全に界隈ごと離れちゃったな。

さて、この漫画ですが話の筋に関してはまあたしかにやや無理があります。単にVの中の人と偶然会っちゃうとかいう物語上の都合じゃなくて、その後の展開に関してです。しかし、一方で配信周りの描写のディテールは完璧で、一朝一夕でこのジャンルかじった人じゃないのもすぐわかります。

ジャンル的には百合としていいと思うんですが、私が琴線に響いたのはファンダムにおける心理の動きみたいなのをうまくさらってくれたような気がしたところです。題材はいちおうVtuberになってるけど、アイドル的なもの全般に通じるテーマだと思う。ただ、アイドル的なもの全般と括ったときにVというジャンルがどういう特性を持っているかという一面をうまく突いていると思います。

ジャン=リュック・ナンシーじゃないけど、共同性なるものはどのように形成されるのか、その中心が不在となったとき外縁はどうなるのか、そんなことがわりと関心にあるのかもしれないね。

水戸市子『マイシー・マイサマー』 (四季賞2018秋受賞作)

前に読んだことあってとても良かったんですが、こういう短編って得てして忘れがちだし連想で思い出せた今のうちにブログに残しておきます。

率直に言えば確実に市川春子の影響下です。個人的には市川さんも短編集2つはありえないくらい読み込んだけど宝石の国になってからは…まあこれはいいや、とりあえず市川春子でピンと来る方には何も説明いらないでしょう。

内容はアイルランドの詩人ウィリアム・バトラー・イェイツを主人公とした幼少期の一夏の不思議な体験を描いたもの。個人的にはイェイツはサミュエル・ベケットの『…雲のように…』という作品で引用されていた詩の一節で関心を持った作家です。

小泉八雲に代表されるように、アイルランドケルト神話と日本神話の精神性は非常に似通ったものがあるとよく指摘されます。この作品もそういったところをとても丁寧に解釈していて、豊穣で美しい作品世界になっています。幼少期にのみ見える特別な世界における一夏の不思議な体験、初恋の原型としてのボーイ・ミーツ・ガールなど、童話的で普遍的な作品性。

しかし再読して思ったのは、この作品の大きな良さの1つは主人公の2人が大人になった時点から始まるところなんじゃないかなということです。しかもイェイツが作家として大成してサイン会を開いているという非常に地に足のついた俗世のシチュエーションで。鶴見俊輔が言っていたように、そういったところでも特別な時間というのは浮かび上がってくる。

神話的時間

神話的時間