そろそろチェンソーマンについて書いておくか

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ネタバレなしです。

(※はてなブックマークに本誌バレコメントあるので未読者は見ないように)

まず個人的なことから書かせてもらおうかな。

私は元アフタヌーンっ子です。

Twitterでは何度か書いたけど、人生を狂わせた作品を5つ上げるとしたらまず入るのが、植芝理一『ディスコミュニケーション』である。

僕にとってテレビでやってるメジャーカルチャーとは違う、オルタナティブな世界を教えてくれた最初の作品の1つがこれです。それからごく自然な流れとしてBLAME!も読んだし、ヨコハマ買い出し紀行も読んだ。結果としてこれらの90年代アフタヌーン作品は今も自分の嗜好やアイデンティティの深いところに根を張っています。

 

で、時は流れ、チェンソーマンです。

2019年の夏頃からにわかにTLで「なんであの人(そういうタイプの人)ジャンプ読んでるんだろう」と思うことが増えてきました。

その前にアクタージュは知っていたし、Dr.STONEのアニメも観ていたので最近のジャンプ挑戦的なテーマやってるんだな~とは思っていたけど、それを加味してもチェンソーマンの名前は明らかに異色の存在感を放っていた。

で、とりあえず見た。絵を。そして思った。

 

なんだこのアフタヌーンみたいな漫画……

 

いや、しかし絵だけかもしれない。だいたいジャンプって言ったって昔読んでた頃もハンタとかデスノートとかわりとダークな作品の枠あったしな。もう少し週間少年マンガ的にチューンナップされてるに違いない。

で、6巻が発売されたとき全巻買って読んだ(レゼ編終わるまで)。

そして俺はこう思った。

 

なんだこのアフタヌーンみたいな漫画……

 

ちなみに最近呪術廻戦を読みましたが僕がチェンソーマンに抱いていたイメージはだいたいこういう感じでした。

そもそもこの漫画はファンが異常にネタバレに過敏なのでどういう漫画なのかすらよくわからないという人も多いと思ので、アフタヌーンはいったん置いといて簡単に内容の話をします。

一応公式サイトに1話の試し読みはある。

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大まかなあらすじは、悪魔と総称されているクリーチャーが跋扈する近現代の日本を舞台とし、社会の最下層でぎりぎりの生活をしている主人公・デンジがデビルハンターとして活動する、というダークヒーロー的な作品といえます。

とはいえそうは言っても何が面白いのかの説明にはなっていないので、以下個人的にこれはと思う部分です。

私の見る限り、この作品の大きな特長は2つ3つ挙げられます。

まずキャラクター。

とにかくキャラの立て方が抜群です。どいつもこいつもアクが強く、1話で退場する無名モブですらやたら印象に残る。みんなも好きなキャラが地獄のような目に遭うのを見てのた打ち回ろう。

ちなみに俺の推しは合計数話くらいしか出てないのに人気投票10位に入った吉田ヒロフミ。

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それと絵。やや粗いタッチで好みが分かれるかもしれません。

しかし、演出力が圧倒的です。

アフタヌーンやビームのようなサブカル・アート寄りの漫画を彷彿とさせる凝った構図やコマ割りと、少年漫画的な動きのあるダイナミックな作画の両取りという感じがあります。個人的な感覚的としては、画力や演出力で魅せつつ、視線が引っかかって読みにくくもないという非常に珍しい手触りがあります。

特に最近(おそらく9巻以降に収録)の演出は毎回毎回キレまくっています。絶対アニメ化してほしいんですが正直相当なスタッフ揃えないと原作負けする可能性が高いのではないかとすら感じます。

そして最後に、ストーリーテリングです。

チェンソーマンを要素ごとに分解した場合、なぜ今現在これほど支持を得ているのかと言えば、おそらくこの部分が圧倒的だと思います。

さっき私が書いたあらすじ、あれ間違ってないんですが、6割くらい嘘です。

一応4巻くらいまではまだぎりぎりダークヒーロー的な異能力バトルものと言えなくもないんですが、その後はもう確実にその枠を越えていきます。

個人的にこの漫画のターニングポイントになったと思うのが、5~6巻に収録されているエピソード、レゼ編です。

このあたりからアンチヒーロー的な斜めの面白さに加えて、作品に映画のようなリリシズムが載ってきます。既読者からの人気も高いはず。

そういうわけで個人的には6巻まで読んでほしい。ストーリーのキリもいい。

おそらくですが、この作者は脚本術みたいな話作りの技術についてものすごく研究しているのではないかと思います。インタビューを読んでいるととにかく映画をフェイバリットに挙げているのでそのあたりの影響をわりと直接的に感じることもあるんですが、それ以上にもっと話作りの構造的なところで、ストーリーがどう面白くなるかの本質的な視点がある気がします。

見る人が見ればテクニカルな分析でどう凄いのかを言語化することもできるのではないかと思うのですが(そういう凄さを感じる)、私にはただただ毎週読んで絶叫することしかできない。

ただ、1つ比較対象として挙げるとすれば、前作のファイアパンチです。

藤本タツキ先生は昔のインタビューハイスクール・フリートを挙げているなど、とにかく予想を裏切る展開についてものすごい執念があるような気がします。ファイアパンチはとにかくこれが全編に渡って貫かれていて、このあと何が起こるのかわからん度合いについては凄いんですが、終わってみるとそれが面白さに寄与していたか?というと個人的には微妙だった気がします。

しかし、チェンソーマンはここが大きく修正されています。次に何が起こるのかわからん度合いはそのままに、毎週ツイッターのトレンドにタイトルを叩き込み続けているのがその何よりの証左です。

★★★

 

さて、長くなりましたが最初に元と書いた通り、近年のアフタはあんまり読まなくなっちゃいました。

理由としては私の好みも大きいとは思いますが、00年代以降のアフタがクセやアクの強い作家をうまく一般受けするようにセルアウトさせる傾向にいっちゃったのがあんまり物足りなかったからです。いやまあ今も四季賞見てるとこんな作家掘り出せるのはここだけだと思うことも多いんですが。でもやっぱり今ディスコミの冥界編を何年も連載させるのとか無理じゃないかな…と思ってしまう。

ですがチェンソーマンはこれを完全に打ち破ってくれました。俺はこの作品が出てくるのを待っていたのかもしれないとすら思う。それくらい作品に強度があります。

ぜひ単行本全部買って定期購読の悪魔と契約していただきたい。