[音楽]降幡愛『Moonrise』

声優ソロのシティポップ路線となると、もうどうにもでもしてって感じで、俺はあと何回一十三十一のコピーのコピーみたいなの聴けばいいんだよみたいになってるけど、降幡愛さんのこれは評判いいのでそのうち聴こうと思ってはいました。思ってはいたけどシティポップの字面だけで食傷だったので放置してたけど。

で、最近虹ヶ咲に夢中になってる関連で昔のラブライブの曲もさらい直してて、そういえば降幡さんのやつまだだなという思考の経路を辿ってやっと聴きました。

一応言っとくと僕はラブライブサンシャイン1クール目で止まってて降幡さんがどの子の人なのかも知らないレベルです。

何?この音は?初期のムーンライダーズか?

いや、これ売り方としては最近のシティポップブームに乗っけたんだろうしそれで普通に正解だろうけど、中身は絶対アプローチからして他と全然違うでしょ。ビジュアルワークも永井博っぽいアートワークとか80年代アニメとかほぼナイトテンポだけど、なんかそういうのに慣れてるほうが逆に裏切られる作品な気がする。

まずサウンドのキラキラ感があんまりない。というか普通に音が古いくらいに感じる。一応曲のモチーフは都会で統一されてはいるんだけど、サウンドの印象はもうちょっと広くてニューミュージック全般に近い感じがする。

そして、というか個人的にこれが一番大きく感じるんだけど、ヴェイパーウェイヴ以降の匂いがあんまりしない。バブル時代への憧憬から再構成された虚構の過去、みたいな一種のオリエンタリズムやエキゾチシズムが入り込んでる感じがない。そういった主観は一切捨てて往時の制作プロセスを丁寧にトレースしました、みたいな感じを受ける。

その辺が最近のアイコンや表象としてのシティポップとだいぶ違う。たぶんプロデューサーの本間昭光さんがガチで当時音楽やってた人でガチで当時の機材使ってるのが大きいんだと思うけど。

逆にはやみんが今年出したgardenはそっちに思い切った方向性にしてたので比較するとわかりやすい。

ついでに書きながらインタビューを読んでたんですが、

なんか読んでるとマエストロ本間昭光にとっても相当充実したお仕事だったんじゃなかろうかという気がした。こんだけ売れ線と逆ベクトルの作品に仕上がってると。

それと本人作詞で詞先で作ったってのにも驚きました。たとえば上に貼ったYの悲劇って曲は薬師丸ひろ子Wの悲劇って曲が元ネタ(だと思う)なんだけど、もうこの選択からしてわからなすぎる。いや私も別に80年代マニアじゃないから知ったふうな顔できないけど、でも少なくともプラスティック・ラブとかじゃなくてこんなの元ネタに持ってくるのはおかしいよ。

 

★★★

そういえば降幡さんのやつ思い出したきっかけにフォロワーのライブレポもありました。

こっち読んでてもあーすごいこだわってるソロ活動だなーせっかくソロデビューするならみんなこれくらいこだわってくれたらいいのになーと思ったけど、まあそもそもこんだけこだわりある人なんかそうそういないよな……そもそも声優が歌う必要ないし……。

でもこういうジャンルとジャンルの合間みたいなところからこういう作品が生まれるのってやっぱりいいな、と思います。

どうでもいいけど僕はVaporwaveがシティポップを再発見したっていう史観はあんまり腑に落ちてない。本当に80年代の再評価に先鞭をつけたのは2010年代前半の東京インディーのミュージシャンあたりだと思ってる。でないと俺が山下達郎とかムーンライダーズ聴いてる理由の説明つかないよ、と、常に思っています。

Moonrise (初回限定盤) (特典なし)

Moonrise (初回限定盤) (特典なし)

  • アーティスト:降幡愛
  • 発売日: 2020/09/23
  • メディア: CD